12.マネキン人形の改造

  とある博物館に約40年前の様子を再現
 するコーナーがあり、そこに展示されてい
 たマネキン人形が左の三体です。 この
 3体は酒をくみ交わしている様子を表した
 もので、いわば「3人の酔っぱらい」です。
 これを、まじめに議論している様子にして、
 しかも顔を若くする
のが改造の要点です。

  すでに完成予想図ができており、それに
 従ってポーズを変更することから始めました。
 また着工にあたり、この3体を便宜的に田中、
 佐藤、吉田と呼ぶことにしました。




 ポーズの変更

 ポーズを変更するために一度、体をそれぞれ必要に
 応じてバラバラに切断しなくてはなりません。体の材
 質はFRPだったので、サンダーに切断砥石を装着して
 切断しました。
  思い通りのポーズになるように切断面を削って調整
 します。そしてアルミフラットバーを使用して再度連結
 し直しました。
  左の田中さんは少し前屈みにして、二の腕もやや持
 ち上げています。









手の複製

   
   型取り中      レジン注入    複製の取り出し  完成品
   

 今回の改造内容には手の変更も必要事項だったので、簡単に手や指の複製を作る方法を開拓しな
ければなりませんでした。シリコンゴムで型を作ることは時間的、予算的にも無理のある方法なので、
画材屋さんに相談したところ、最適な方法がありました。それがこのモデリアルという型取り材です。
モデリアルは粉末状で販売されており、重量比で5倍の水に溶いて使用します。ゲル化したモデリアル
に手や、指を入れて硬化を待ちますが、硬化時間は水温でコントロールできるのが利点であり、また
経験を要するところです。うまくなれば5分程度で型取りを終えることができ、すぐにレジンを注入
できます。注意すべき点は以下のとおりです。
・あまり精密な型取りはできない。
・1回きりの使い捨てである。
・使用済みのモデリアルを細かくして再投入(かさ増し)できない。
上記のような欠点がありながらも500グラム(3sの型に相当)で¥1680という低価格と、
スピーディーな作業性は魅力です。

顔の変更
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 顔は口を閉じて、彫りを浅くして若くみせるというのが具体的な変更内容です。 上は田中さんの
顔の変化です。
1.オリジナルの田中さん。マンガ的にデフォルメされた関西系の酔っぱらいか?
2.削りたいところをサンダーで落としました。
3.ポリパテを盛り付けたところ。これをサンドペーパーなどで削って整形し、再度パテ盛り、整形
  を繰り返す。
4.タミヤのサーフェイサーを吹き付けたところ。
5.白のラッカースプレーで下塗りし、その上に肌色をプロスプレーで吹き付け。口や瞳などは筆塗りです。
6.黒のペンキで髪の毛をハケ塗り。しかしテカリすぎたので、後にツヤ消しクリヤーのスプレーで
  テカリを調整しました。
7.現場に復帰した3人。田中さんは一升瓶の代わりに稲穂を持ち、真ん中の佐藤さんはそれに手を
  差しだそうとしています。かつてその右手はグラスを持っていました。

今回のような仕事はめったにないのですが、いろいろと勉強になり有意義な経験でした。趣味とは異なり、
仕事には納期と予算があるので、相手が満足するレベルをクリヤできればそれでオーケーと割り切ら
なければ儲けになりません。一見難しそうに思える仕事も、的確な計画と道具があればアッサリとやれる
ものです。それが、「あーでもない。こーでもない。」とか「やってみなければわからない。」という
のでは儲けになりません。この手の仕事の相場が高額なのは、そのようなリスクを予測して見積もって
いるからなのです。


              
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