1/144 富嶽原型 Part.1



 2012年7月に1/144スケールの富嶽がフジミより発売されました。 実はこれ、その1年前に私が原型を作ったものです。
自分にとってメジャーな商品としては初めての原型の仕事でした。
 そもそも富嶽とは太平洋戦争末期に計画された長距離爆撃機で、アメリカ本土へ直接攻撃することによって戦況の
起死回生を狙ったものでした。 しかしこれは計画段階で終戦となり、図面らしいものは全長・全幅・全高がわかる略図
が残っているだけです。 この略図にはエンジンナセルが6箇所(計画では誉エンジンが2×6基)あり、それぞれの推力
中心線が放射状に広がっていることが記載されています。 これだけの情報で富嶽を立体化することになりました。 



 なにはともあれ図面を作成することから始めました。 自分は大戦機の知識が乏しかったのですが担当の方が非常に
詳しく、参考になる大戦機の画像やアドバイスのおかげで説得力のある機体を設計することができました。 例えばラジ
エーターやターボチャージャーの位置、銃座に関する考察、胴体直径の検討などは自分だけではどうにもならない問題
でした。 機首形状は与圧の問題を考えればB-29のような半球型になるのでしょうが、これでは商品としての魅力に欠
けるため初代新幹線のような形状にしました。 プロペラは4翅2重反転と6翅の2種類を用意することにしました。 



 設計が固まり、実際に着工したのは2011年5月からです。 しかし作業スペースが無かったので女房の実家の敷地内に
あった解体寸前のプレハブ作業小屋を1ヶ月使わせてもらうことになりました。 また、エンジンカウリングやスピナーなど
機械加工が必要な部品が多々あるので中古の小型旋盤も購入しました。
 原型製作はその旋盤を使ってカウリングとスピナー、旋回銃座を作ることから始めました。 これらのパーツはすべて
あとで3Dデータ化されてから金型になるので、複数必要なパーツも原型は一つで足ります。 6個必要なカウリングも原型
は1個あれば良いのです。 プロペラブレードは1枚作ってそれをレジン複製し、これらをスピナーに差込んで一体型のプロ
ペラパーツにしました。 
 主翼は上の画像のようにリブにプラ板を貼り付ける構造にしましたが、これは良くありません。 やはり表面がペコペコ
して剛性が不足します。 本来なら樹脂か朴材のムクで作るべきでした。



 上の画像は各翼面の完成状況で、胴体に差し込むためのベロもつけておきます。  水平、垂直尾翼はプラ板積層構造
です。 主翼下面の四角い開口部は主脚収納部です。

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